人事制度

#6-3 等級と役割の違いとは?簡単にわかる要件定義

※この記事の動画はこちら

今回は、人事制度の「等級役割の要件定義」について見ていきます。

等級役割の要件定義とは、人事制度の設計で、求める人物像や評価方法、給与などを決めるときに評価軸になるような定義のことです。

人事制度の中でも特に重要な部分です。これらをうまく定義することで、社員の皆さんの疑問にしっかり答えられるようになります。

ではさっそく役割定義のポイントから見ていきましょう

役割定義のポイント

まず、役割定義ってなに?と思う方もいらっしゃると思うので簡単に説明します。

役割とは、例えば一般社員、主任、係長、マネージャーといった職位や職種のことです。

会社に必要な職位・職種などの役割を決め、定義していくことが役割定義です。

役割分担の方法

役割分担の仕方には、大きく縦割りと横断的な方法があります。

縦割りのメリット・デメリット:

  • メリット: 仕事の範囲が明確で、誰が何をやるかが分かりやすい。
    責任感も生まれやすい。
  • デメリット: 隣の人の仕事が分かりにくく、有事の際にサポートしにくい。
    仕事の間に落ちるボールが生まれやすい。

横断的な役割分担のメリット・デメリット:

  • メリット: イレギュラーなサポートがしやすく、イノベーションも生まれやすい。
  • デメリット: 仕事の範囲が広く、誰に報告すれば良いかが分かりにくい。
    責任感が薄れやすい。

役割分担を見直すときは、制度化➡実践ではなく、一部で実践➡制度化の流れを意識してみましょう。

役割定義の詳細度

次に、役割をどこまで詳しく定義するかです。

ミッションまで定義する場合:

  • メリット: 採用ギャップが生まれにくく、引き継ぎがスムーズになる。
    給与も明確になりやすいです。
  • デメリット: 運用が非常に大変。一度定義しても、役割が変わるたびに見直す必要がある。

等級定義のポイント

等級定義についても見ていきましょう。

等級とは、社員の能力や影響力に基づいて階層を作るもので、基本給の根拠にもなります。等級と役割をどう紐付けるかが重要なポイントです。

ここで、そもそもなぜ等級が必要なのか、役割定義だけではなぜ不十分なのでしょうか。

経営によって組織体制は頻繁に変わり、同時に役割の数・定義も変えていかなければなりません。移り行く組織体制に柔軟に合わせるために等級をつくり、基本給の乱高下を抑えるために等級が必要なのです。

では、等級定義の4つの基本の論点を1つずつ解説していきます。

等級定義についてしっかり学んでいきましょう!

1. 等級と役割の紐づけによくある3つの型

等級と役割を紐付けない場合:

  • メリット: 基本給の健全性を維持できる
  • デメリット: 評価が漠然として年功序列になりやすい
  • 運用工夫:別々に定義し、等級は能力定義となる
    この場合、階層は6程度まで(差を明確に定義できないため)にする

等級と役割を部分的に紐付ける場合:

  • メリット: 基本給の健全性を維持しつつ、評価が具体的になる
  • デメリット: 評価コストがかかりますが、年功序列になりにくい
  • 運用工夫:別々に定義するが(一部の)役割を、等級にまたがせる

等級と役割を完全に紐付ける場合:

  • メリット: 評価が明確になり、基本給も連動しやすくなる
  • デメリット: 等級の変更が頻繁に必要になり、運用が複雑になる
  • 運用工夫:完全に一致させる。代わりに基本給変動が起きにくい工夫も必要
    例)役割につく前に候補期間をつくり、一定期間、給与に影響しない期間をつくる
      役割変更で降給する際、1年だけ調整手当がつく

2. どう定義するか

等級制度は定義の仕方に名前があります。

  • 職能等級制度:能力で等級が決まる
  • 役割等級制度:役割定義で等級が決まる
  • 職務等級制度:職務定義で等級が決まる

これらの3つの定義も、役割との紐付け方でメリット・デメリットは変わります。

3. 何階層にするか

階層が多い場合は、成長実感が得やすいが、評価コストは高く、定義は不明瞭になりやすいです。

逆に、階層が少ない場合は、成長実感に停滞感を与えるが、評価コストは低く、提議は明確であることが多いです。

役割と等級が完全に紐づいているときは、階層が多くても問題ありません。

4. 専門職等級をつくるか?

専門職等級を作らない場合:

  • メリット:制度がシンプル
  • デメリット:「管理職以外のキャリアがない」と思われやすい
  • 運用工夫:「ないがしろにされている」「見通しがない」と思われないよう、キャリア支援施策等級判断をより丁寧に行う

専門職等級を作る場合:

  • メリット:管理職以外も、キャリアがあることを明示できる
  • デメリット:運用が重くなりやすい
          組織体制変化・採用市場の変化に対応しにくくなる
          該当者の少なさから形骸化しやすい
          「管理職じゃない人」の評価の逃げ道になりやすい
  • 運用工夫:本当にコストに見合うか、検証を丁寧に行う
         また、それでも専門等級がない人が残る場合は、特別丁寧に説明を行う

具体的な等級・役割定義の方法とは

成果・行動・能力を定義する際のよくある流れ

  1. 求める成果・行動・能力を洗い出す
  2. 星取表をつくる
  3. 役割・等級ごとに星取表を整理する

ここで注意点ですが、「育成のため」と思い丁寧に設計しすぎてしまい、項目が多すぎて「評価」の機能を失って形だけの存在になってしまい、失敗に繋がることが多いです。

それを防ぐために、どこまで評価に用い、どこを育成の参考情報にするのかを整理しておくことが必要です。

まとめ

等級と役割の要件定義は、社員のモチベーションや組織の効率に大きく影響します。自社の状況に合った方法を選び、しっかりと運用していくことが大切です。

次回は、「目標管理・短期評価」についてさらに詳しく見ていきますので、お楽しみに!

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