今回は人事制度の4番目、目標管理と短期の評価の仕方について解説していきます。
前回の記事で、等級や役割の定義について触れましたが、今回は目標管理、具体的には目標の定義や評価基準の設定、そしてその評価方法について見ていきましょう。
目標管理って何?
まず、そもそも目標管理とは何かを説明します。
目標管理は、四半期や半期ごとに全員が必須で行う評価方法です。
等級や役割評価は希望制や推薦制の場合もありますが、目標管理はより短期的に必須で行われることが多いです。
具体的には、四半期や半期の始まりに目標と評価基準を設定し、終わりのタイミングでその達成度合いを評価します。
短期評価の代表的な手法「MBO」のメリットと大きな課題とは?
目標管理の代表的な手法にMBO(Management by Objectives)があります。
※MBO(Manegement by Objective and Self-Control)ピーター・F・ドラッカーの「現代の経営」にて紹介
MBOの特徴
- 社員自身が目標設定と自己管理を行う:社員が自主的に目標を設定することで、モチベーションが高まり、組織のマネジメントが機能しやすくなる
- 給与決定のために使われることが多い:本来は評価や給与のためのものではないが、実際には多くの企業が給与決定のために活用している
MBOの基本プロセス
MBOのプロセスをPDCAサイクルで説明すると、以下のようになります。
- プラン:組織の目標を見て、自分の目標と評価基準を設定し、上司と調整する
- 実行:自己管理を基本に、上司のサポートを受けながら目標に向かって進む
- チェック&アクション:目標に対する達成度合いや課題を自己評価し、上司も同様に評価する
- 次のサイクル:次の四半期や半期に向けて新たなプランを立てる
多くの企業が取り入れているこの手法には、大きなメリットと課題が存在します。
MBOのメリット
- 短期の成果や行動を評価できる:等級や役割は中長期の評価になるが、MBOは短期の評価が可能
- 評価の納得度が高い:自分で作った目標に対して評価されるため、納得しやすい
- 成長育成に繋がる:目標と現状のGAPを考えることで、次の改善点を見つけ、成長に繋がる
MBOの課題
- 上意下達の運用になりがち:目標設定や数値管理が社員に任せられず、上司が一方的に決めることが多い
- 育成と給与決定のバッティング:目標達成度合いで給与が決まるため、難易度を低く設定したり、状況を誇張して報告することが起こりやすくなる
短期評価の代替手段
年功制の部分的取り入れ
年功制を部分的に取り入れることで、評価コストを減らし、純粋に成長や成果に向けた話し合いができるようになります。ただし、短期の個人の頑張りを評価しにくくなるデメリットもあります。
- メリット:給与決定によるMBOの歪みがなくなる
他者評価の余地がなく、純粋に顧客や自分自身の目的のために仕事ができる
評価コストが大きく減る - デメリット:給与を目標達成・成長の動機にできない
短期の個人のがんばりを評価できないことが不満につながる
OKR(Objectives and Key Results)を取り入れる
OKRは、達成したくなるようなワクワクする目標と、そのための具体的な指標を設定する手法です。
OKRの特徴
- 目標はワクワクするもの:社員がやりたくなるような目標を設定
- 指標の達成度は70%程度でOK:基準は緩めに設定し、むしろ達成しすぎた場合は基準を見直す
- 公開範囲は全社員:目標と進捗を全社員に公開
- 頻繁なレビュー:毎週や毎月のレビューで、細かく進捗をチェック
その他の方法
ティール組織のピア評価
ティール組織では、社員が年に一度同僚全員を評価します。
評価基準は「この人は私より会社に貢献しているか?」と「この人は評価に足る根拠を持っているか?」の2つです。シンプルなアルゴリズムで評価を集計し、ABCランクをつけます。評価コストが低く、効果的な方法の一つです。
まとめ
今回は目標管理と短期評価の仕方について、MBOやその代替手段、OKRやティール組織のピア評価などをご紹介しました。
自社の短期評価はどう行っており、どんな改善ができそうでしょうか?
どの方法が最適かは企業文化や目的によりますが、それぞれの特徴を理解して、より良い評価制度を取り入れてみてくださいね。
次回は、人事制度5回目「中期評価の設定」について解説していきます。ぜひおたのしみに!