今回は、人事制度の「等級役割の要件定義」について見ていきます。
等級役割の要件定義とは、人事制度の設計で、求める人物像や評価方法、給与などを決めるときに評価軸になるような定義のことです。
人事制度の中でも特に重要な部分です。これらをうまく定義することで、社員の皆さんの疑問にしっかり答えられるようになります。
ではさっそく役割定義のポイントから見ていきましょう
役割定義のポイント
まず、役割定義ってなに?と思う方もいらっしゃると思うので簡単に説明します。
役割とは、例えば一般社員、主任、係長、マネージャーといった職位や職種のことです。
会社に必要な職位・職種などの役割を決め、定義していくことが役割定義です。
役割分担の方法
役割分担の仕方には、大きく縦割りと横断的な方法があります。
縦割りのメリット・デメリット:
- メリット: 仕事の範囲が明確で、誰が何をやるかが分かりやすい。
責任感も生まれやすい。 - デメリット: 隣の人の仕事が分かりにくく、有事の際にサポートしにくい。
仕事の間に落ちるボールが生まれやすい。
横断的な役割分担のメリット・デメリット:
- メリット: イレギュラーなサポートがしやすく、イノベーションも生まれやすい。
- デメリット: 仕事の範囲が広く、誰に報告すれば良いかが分かりにくい。
責任感が薄れやすい。
役割分担を見直すときは、制度化➡実践ではなく、一部で実践➡制度化の流れを意識してみましょう。
役割定義の詳細度
次に、役割をどこまで詳しく定義するかです。
ミッションまで定義する場合:
- メリット: 採用ギャップが生まれにくく、引き継ぎがスムーズになる。
給与も明確になりやすいです。 - デメリット: 運用が非常に大変。一度定義しても、役割が変わるたびに見直す必要がある。
等級定義のポイント
等級定義についても見ていきましょう。
等級とは、社員の能力や影響力に基づいて階層を作るもので、基本給の根拠にもなります。等級と役割をどう紐付けるかが重要なポイントです。
ここで、そもそもなぜ等級が必要なのか、役割定義だけではなぜ不十分なのでしょうか。
経営によって組織体制は頻繁に変わり、同時に役割の数・定義も変えていかなければなりません。移り行く組織体制に柔軟に合わせるために等級をつくり、基本給の乱高下を抑えるために等級が必要なのです。
では、等級定義の4つの基本の論点を1つずつ解説していきます。
等級定義についてしっかり学んでいきましょう!
1. 等級と役割の紐づけによくある3つの型
等級と役割を紐付けない場合:
- メリット: 基本給の健全性を維持できる
- デメリット: 評価が漠然として年功序列になりやすい
- 運用工夫:別々に定義し、等級は能力定義となる
この場合、階層は6程度まで(差を明確に定義できないため)にする
等級と役割を部分的に紐付ける場合:
- メリット: 基本給の健全性を維持しつつ、評価が具体的になる
- デメリット: 評価コストがかかりますが、年功序列になりにくい
- 運用工夫:別々に定義するが(一部の)役割を、等級にまたがせる
等級と役割を完全に紐付ける場合:
- メリット: 評価が明確になり、基本給も連動しやすくなる
- デメリット: 等級の変更が頻繁に必要になり、運用が複雑になる
- 運用工夫:完全に一致させる。代わりに基本給変動が起きにくい工夫も必要
例)役割につく前に候補期間をつくり、一定期間、給与に影響しない期間をつくる
役割変更で降給する際、1年だけ調整手当がつく
2. どう定義するか
等級制度は定義の仕方に名前があります。
- 職能等級制度:能力で等級が決まる
- 役割等級制度:役割定義で等級が決まる
- 職務等級制度:職務定義で等級が決まる
これらの3つの定義も、役割との紐付け方でメリット・デメリットは変わります。
3. 何階層にするか
階層が多い場合は、成長実感が得やすいが、評価コストは高く、定義は不明瞭になりやすいです。
逆に、階層が少ない場合は、成長実感に停滞感を与えるが、評価コストは低く、提議は明確であることが多いです。
役割と等級が完全に紐づいているときは、階層が多くても問題ありません。
4. 専門職等級をつくるか?
専門職等級を作らない場合:
- メリット:制度がシンプル
- デメリット:「管理職以外のキャリアがない」と思われやすい
- 運用工夫:「ないがしろにされている」「見通しがない」と思われないよう、キャリア支援施策や等級判断をより丁寧に行う
専門職等級を作る場合:
- メリット:管理職以外も、キャリアがあることを明示できる
- デメリット:運用が重くなりやすい
組織体制変化・採用市場の変化に対応しにくくなる
該当者の少なさから形骸化しやすい
「管理職じゃない人」の評価の逃げ道になりやすい - 運用工夫:本当にコストに見合うか、検証を丁寧に行う
また、それでも専門等級がない人が残る場合は、特別丁寧に説明を行う
具体的な等級・役割定義の方法とは
成果・行動・能力を定義する際のよくある流れ
- 求める成果・行動・能力を洗い出す
- 星取表をつくる
- 役割・等級ごとに星取表を整理する
ここで注意点ですが、「育成のため」と思い丁寧に設計しすぎてしまい、項目が多すぎて「評価」の機能を失って形だけの存在になってしまい、失敗に繋がることが多いです。
それを防ぐために、どこまで評価に用い、どこを育成の参考情報にするのかを整理しておくことが必要です。
まとめ
等級と役割の要件定義は、社員のモチベーションや組織の効率に大きく影響します。自社の状況に合った方法を選び、しっかりと運用していくことが大切です。
次回は、「目標管理・短期評価」についてさらに詳しく見ていきますので、お楽しみに!