◆この記事の内容
近年、日本国内でも重要性が高まっている”最高人事責任者”、CHRO(Chief Human Resource Officer)。
CHROは、経営戦略と人材戦略を連動させるために①経営への参画、②社員の育成、③人事評価制度の管理と社員の育成、3つの役割を担います。
求められるスキルは大きく5つ。①社内全体の人事マネジメントスキル、②経営力、③ヒューマンスキル、④人事・労務に関する知識、⑤問題解決力です。
はじめに
CHROとは最高人事責任者と日本語で称し、社内における人事関連業務を統括する役割を担う存在です。CHROには人事に関する深い知識に加えて、経営視点を持っていることも求められます。
一昔前であればCHROは日本では馴染みのある役職ではなく、外資系企業において主に設置されている役職でした。しかし、人的資本経営が重視されている昨今では、経営戦略と人材戦略を連動させるためにもCHROを設置する重要性が多くの企業で高まっているのです。
本記事ではCHROの概要を押さえた上で、CHROについて役割や必要なスキルについて見ていきましょう。
そもそもCHROとは
CHROとは、Chief Human Resource Officerの頭文字を取った言葉で、日本語では最高人事責任者と称します。
従来、CHROは外資系企業において主に設置されている役職で、日本では執行役員人事部長や取締役人事部長がそれに近いものでした。
しかし、日本でも人的資本経営の重要性が高まるにつれて人事に関する知識だけではなく、経営視点も兼ね揃える人材の重要性が高まってきています。
そうした中で、国内における多くの企業でCHROのニーズが高まっているのです。
CHROの役割
前述のようにCHROとは経営戦略と人材戦略を連動させる事業を担える人材のことです。とはいえ、CHROには具体的にどのような役割があるのかイメージできない人も多いのではないでしょうか。ここでは、CHROの役割について解説していきます。
経営への参画
CHROには人事的な視点から経営戦略について意見を述べる機会もあります。経営陣が企てた計画が社内の人材の観点から実現できるか意見を述べたり、計画を実現するには人事面でどのようにすればよいか提案したりします。
人事のプロフェッショナルとして経営に携わり、自社のビジョンを実現できるように意見を提言することが求められています。
社員の育成
多くの企業において社員の育成は直属の上司や部署のメンバーが行っています。しかし、それでは部署ごとに育成方法が異なるため、自社が抱えるビジョンに合った人材が育ちにくいという問題があります。
CHROは各部署の上司に対して自社が求める人材や自社が理想とする人材の特徴を伝えると同時に、自社が求める人材の育成方法を各部署のマネジメント職や社員の育成に携わる従業員と共有します。
かつては自社の人材が不足すると人材派遣会社で補ったり、M&Aによって企業ごと人材を買収したりするのが一般的でした。しかし、近年では自社で人材を育成しようと考える企業が多い傾向にあります。
人事評価制度の管理と社員の育成
CHROは人事評価制度を作成し、それが正しく実行されているか確認を行います。作成した人事評価制度を実行し、問題が見つかった際には修正する必要があります。
また、CHROの役割は人事評価制度を作成・管理するだけではありません。人事を統括する責任者として社員の育成を自ら行うこともあります。各部署の管理職に従業員の育成を丸投げするのではなく、対応が必要な従業員のケアを行ったり、管理職のサポートを行ったりします。
CHROに求められるスキル
CHROとして業務に従事する上でどのようなスキルが求められるのでしょうか。ここでは、CHROに求められるスキルについて解説していきます。
社内全体の人事マネジメントスキル
CHROは社内全体の人事を統括する立場です。そのため、一部の部署だけではなく、全ての部署の役割や人事について把握していなければなりません。
各部署が抱える問題に早期に気付けるようにアンテナを日常的にはり、問題を抱えている部署があればそれを解消できるように動くことが求められています。
社内全体の人事マネジメントスキル
CHROは人事の統括者であるだけでなく、経営陣の一員です。人事に関することだけではなく、自社の利益の変動、経済指標、業界の動向、株価などについても把握しておかなければなりません。
自社の現状をよく理解した上で、どのようにすれば長期的に事業を存続できるか経営陣とともに考えていくことが求められます。
ヒューマンスキル
CHROは社内におけるさまざまな人たちと関わる機会があります。経営陣や各部署のマネジメント職はもちろん、新入社員と関わる機会も多くあります。また、CHROには経営陣と現場で働く従業員をつなぐ役割があるため、互いの声をうまく広い、それぞれに届けなければなりません。
誰からでも信頼される人間力や高いコミュニケーションスキルがなければ、自社にとってベストな状況をつくるために動くことが難しくなります。
人事・労務に関する知識
CHROは人事や労務に関する制度や法律を理解し、それらがきちんと守られているか確認したり、法律を尊守した従業員の働き方を提案したりすることが求められます。
労働に関する法令は改正されることも少なくないため、法改正について常にアンテナをはっていなければなりません。法令改正の施行前から社内規定の改定に向けて準備を進める必要があります。
問題解決力
CHROは人事や経営に関するトラブルが生じた際には迅速な対応が求められます。また、各部署のマネジメント職から人事に関する相談を受けたり、問題を解決できるように動いてほしいと頼まれたりすることもあります。
問題を正しく分析し、どのように対処することで解決に導けるか考える力が不可欠です。
まとめ
日本において企業を取り巻く環境は大きく変化しており、自社が存続するためには戦略的にビジネスを展開していかなければなりません。また、消費者や取引先の信頼を損なわないためにも、トラブルが生じた際には的確な対応をスピーディーに行うことが求められます。
CHROの存在があれば自社の人事を経営戦略を踏まえて推進していけるため、将来的により利益を上げられる組織へと育てていくことができます。
また、経営方針についても人事のプロの意見を加えることで、より現実味のある方針を練ることができます。